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実務家教員の定義とは?

あなたは実務家教員と呼ばれるようになります。

 

もしあなたが大学教授になったら、あるいは大学教員に応募したら、あなたは実務家教員というカテゴリーに入ります。

 

実務家教員とは

 

実務家教員の明確な定義はありませんが、国立研究開発法人科学技術振興機構が運営する研究者のためのポータルサイトJREC-IN Portal)では「一般には、企業・官公庁その他における実務経験を通して培われた知識・スキル等を活かして、大学及び大学院(専門職大学及び専門職大学院を含む)、短期大学(専門職短期大学を含む)、高等専門学校、又は専門学校、すなわち各種高等教育機関において、教育・研究その他の職務に従事する教員を意味します」とあります。

 

わかりやすい例としては現役の弁護士が法科大学院の教授になる、というようなことです。もちろん弁護士等の士業、医師の実務経験だけでなく民間企業や役所の実務経験を通して培われた知識・スキルも対象になります。

 

実務家教員の根拠

 

大学は文部科学省の省令である「大学設置基準」によってさまざまなことが細かく定められています。その中に教授の資格(第十四条)というのがあります(准教授、講師、助教の資格も同じようにあります)。(一)博士の学位があり、研究上の業績を有するものとか、(四)大学において教授、准教授または専任の講師の経歴があるものとか、(五)芸術、体育等については特殊な技能に秀でている(安藤忠雄や原監督はこれだな)とか。

 

そこに昭和60年の改正で(六)「専攻分野について、特に優れた知識及び経験を有すると認められた者」という項目が加わりました。「次の各号のいずれかに該当し、かつ大学における教育を担当するにふさわしい教育上の能力を有すると認められた者」とあるので、つまり教育上の能力さえ認められれば博士の学位や研究業績、教育の経歴は無くても良い、ということになりました。

 

この時出された文部次官通知を少し長いけど引用します。

 

「◆改正の趣旨

大学における教育研究の一層の発展を図るためには、大学や研究所のみならず広く社会に人材を求め、その優れた知識及び経験を大学において活用することが必要であることにかんがみ、各界にあって、優れた知識及び経験を有し、教育研究上の能力があると認められる者について、大学の教授等の資格を認めることとしたものであること。

 

◆留意点

(一)今回の改正によって定められた規定は、大学で担当させようとする専攻分野について優れた知識及び経験を有する者について、学位、研究上の業績又は教育の経歴の有無にかかわらず、広く大学の教授又は助教授へのみちを開くものであること。
 この場合において、知識及び経験については、大学の教授会等学内の機関において個々に審査し判定すること。

(二)(一)に掲げる審査及び判定に当たっては、当該専攻分野について優れた知識や経験を有する者を広く教授等に採用しようとする趣旨にかんがみ、単に論文や著書の有無によることなく、例えば

 当該専攻分野に関連する職務上の業績

 当該専攻分野に関連する職務経験の期間

 当該専攻分野に関連する資格

などを考慮して審査、判定すること。

 

◆なお、今回の改正は、教授等になることのできる資格を拡大し、広い範囲に優れた人材を求めることができることとしたものであり、資格の水準自体を変更したものではないこと。」(文部事務次官通知「大学設置基準の一部を改正する省令の施行について」(昭和60年2月5日))※第14条第6号、第15条第5号の改正時の施行通知)

 

実務家に開かれた大学教員への道

 

ということで博士じゃなくても(実際は学位必要ですが)、論文や著作がなくても、大学で教えた経験が無くても、大学教授への道が開かれたのです。

 

ブログなのに書き方がくどくて申し訳ありませんが、実務家教員とは何かについてネットの記事を検索すると現役の大学教員ですら正確に理解していない例が見受けられたのでこのような書き方になってしまいました。

 

次の記事では文部科学省が実務家教員をどのように考えているか、増やしたいのか減らしたいのか、それが現実的に大学教育に(そして実務家教員志望者に)どのような影響があるのかを考察したいと思います。