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教員を採用する側の大学の本音は・・・

何から始めるか?まず、学位をとってください。

 

ある大学の経営情報学部経営総合学科商学マーケティング分野の教員募集の応募資格に「博士・修士の学位を有する者またはそれと同等の能力、業績を有する者」と書いてあります。

 

そうか、必ずしも学位は必要ないのか、と思うかもしれませんが、それは違います。本音のところでは、学位の無い人を採用することはほとんどありません(あなたが高卒で東大教授になった建築家の安藤忠雄のような世界的名声と実績があれば話は別ですが。ちなみに青学大の原監督は中京大学部卒ですが2019年から地球社会共生学部教授です)。

 

なぜ採用する側の大学は民間企業や役所からの応募者にも学位を求めるのでしょうか。

 

第一に、学位があれば教育や研究などの大学の「内側」を少しは知っているだろうと思われるからです。民間企業や役所とは異なる大学の組織や仕事の特性を一から説明するのはなかなか大変です。学位があるということは大学院で学んだ経験があるということですから、学部生と比べて教員や事務職員との接点が多く多少とも「内側」を知る機会が多かったはずです。

 

第二に、少なくとも修士であれば10万字以上の修士論文を書いたか、あるいはそれに匹敵する研究をした経験があるはずです。それはつまり他の人の研究や理論を学んだうえに自分で仮説を立てて検証した、つまり論理的に考えた経験がある、ということです。それがあれば自分が仕事で経験したことを客観的に見直して普遍化して語れるはずです。受け持つ科目で、ただ自分が直接経験したことを自慢話のように語るだけでは授業になりません。それでは困るのです。

 

第三に、既存の学部に採用されるだけなら問題ないのですが、新設の大学や新設の学部に採用される時には大学設置・学校法人審議会による教員資格審査があります。もしかしたら将来学部を新設してそこへ移ってもらうかもしれません。その時はあらためて資格審査があります。たとえあなたが民間企業や役所で実務を経験してきたことが業績として評価され採用されるとしても、学位があれば審査がスムーズに行きます。

 

学位は修士以上、博士でも留学してとったMBAでもPh.D.でもかまいません。たとえあなたが応募するのが商学マーケティング分野で、持っている修士の学位が国文学であってもそれは構いません。国文学の修士をとった後で民間企業に就職してマーケティングの実務で経験を積み業績があればいいのです。直接関係ない分野の学位でも学位は学位です。

 

さて、学位が無ければまず学位を取ってください。社会人が仕事をしながら通って2年間で修士号をとれる大学院はたくさんあります。多くは昼夜開講制といい、平日の夜と土曜日に通って授業を受けて必要な単位をとることができます。後は2年目に修士論文を書き上げて提出し合格すればはれて修士です。

 

社会人になってから、自腹で通って同じような学友と共に学ぶことは大きな意味があります。人生の上でまたとない価値のある体験になるでしょうし、そこであらためて学ぶ楽しさを体感することでしょう。それを自分が教員になった時学生に伝えることも大事なことです。

 

いずれにしろ学位はあっても正規のアカデミズムの世界ではなく企業や役所の実務で業績をあげてきたあなたは、文部科学省、あるいは大学業界でいう「実務家教員」ということになります。次の記事ではあなたがなろうとする「実務家教員」とは何かを解説します。